研究会|Workshops

2021年度 第3回 土山湾研究会


2022年3月5日(土)9:00 – 18:30

会場: Online


午前

 9:00-10:00「⼟⼭湾孤児院の⻩楊⼈形―2022年3月時点の調査報告」 中尾徳仁(天理大学付属参考館)
 10:00-11:00「満州のカトリック宣教」 島由季(大浦天主堂キリシタン博物館)
 11:00-11:15休憩
 11:15-12:15「土山湾工房製祭具の収蔵と特徴についての調査報告」
 内島美奈子(大浦天主堂キリシタン博物館)

午後

 13:30-14:00「日本における土山湾刊行書籍の収蔵状況」 新井菜穂子(北京工業大学)
 14:00-15:00「土山湾印書館の出版書目からイエズス会の「科学計画」をみる」 李梁(弘前大学)
 15:00-15:15休憩
 15:15-16:15「北海道のキリシタン遺物―松前・函館の調査から」
 白石恵理(国際日本文化研究センター)
 16:15-17:15「新村出記念財団「重山文庫」の調査報告」 郭南燕(東京大学)
 17:15-17:30休憩
 17:30-18:30 本プロジェクトのwebsite、今年度の研究報告書、今後の研究活動

発表要旨

中尾徳仁(天理⼤学附属天理参考館)「⼟⼭湾孤児院の⻩楊⼈形――2022年3月時点の調査報告」

2021年11月に行った発表では、天理参考館が所蔵する⼟⼭湾孤児院で制作された⻩楊製⾵俗⼈108点の紹介、および同時代に制作された⾵俗⼈形との⽐較から得た知見について報告した。今回の発表では、主にその後の調査で明らかにすることができた情報について述べる。東京・浅草にある吉徳資料室で実施した木彫人形(満州蒐集)の調査、「地獄ジャンル」の黄楊人形4点と日本の寺院に見られる「地獄巡り」との関連性、20世紀前期に東アジア各地でイエズス会が行った布教活動および中国大陸各地の観光土産と黄楊人形との関連等についての調査結果を報告する。 

島 由季(大浦天主堂キリシタン博物館)「満州のカトリック布教」

これまでの土山湾研究会での研究・報告によって、土山湾工房とメリノール宣教会との関わりや、風俗人形を通した関係性などが明らかにされている。そのどちらにも関わっている地域が満州である。満州のカトリック宣教は1682年の南懐仁(Ferdinand Verbiest)に始まるとされ、1696年には北京司教区の一部に、その後独立してパリ外国宣教会に委任された。本報告では、満州地域のカトリック宣教の歴史を概観し、各宣教会の布教の状況について把握したい。また、前回に引き続き、日本におけるカトリック教会とメリノール宣教会、そして満州との関わりについて、長崎教区報を参照しながら検討を行う。

内島美奈子(大浦天主堂キリシタン博物館)「土山湾工房製祭具の収蔵と特徴についての調査報告」

土山湾工房製の祭具は、現時点では長崎に2点(当館と黒島教会資料館)が確認されている。それらは19世紀後半~20世紀前半のものと推測され、長崎に残る同時期のものにはフランス製もある。長崎各地の初期教会においてこれらが混在している状況であるが、土山湾製とフランス製の祭具の間には、装飾技法や輸入の背景における違いがあるといえる。今回の発表ではフランス製祭具と比較することで土山湾製祭具の特徴等を指摘し、土山湾製祭具を同定するための参考情報を共有することを目的としたい。

新井菜穂子(北京工業大学)「日本における土山湾刊行書籍の収蔵状況」

中国上海市徐家匯地区の土山湾で刊行された天主教書籍について、幕末・ 明治期における日本への流入状況を調査中である。本研究会ではその進捗状況を報告する。

李梁(弘前大学)「土山湾印書館の出版書目からイエズス会の「科学計画」をみる」

キリスト教史上、その際立つ特異性をもって知られるカトリック修道会のイエズス会は、設立当初より教育重視、とりわけ数学(天文、地理などの自然学)の教育重視という特質を持っていることがよく知られている事実である。折しもこのような特質を持つイエズス会の宣教師らは、東アジアにおける宣教運動においてそうした本領を十分に活かし、教勢の拡大を図りながら、東西文化の往還運動における思わぬ落とし子ー漢訳西学書ーーを残した。本発表は、こうした歴史を踏まえて、土山湾印書館の幾つか出版書目からイエズス会のそうした「科学計画」の一端を見てみたいと考えている。

白石恵理(国際日本文化研究センター)「北海道のキリシタン遺物―松前・函館の調査から」

1月中旬に松前町郷土資料館で調査したキリシタン遺物3点を中心に報告する。いずれも1974年(昭和49)3月に松前町の民家から発見されている。当時は松前町を中心とする隠れキリシタンの存在を裏付けるとともに「蝦夷キリシタン史を語る、最初の物的資料」として、蝦夷キリシタン研究会や信者の間で大きな反響を呼んだという。なかでも、背中にマリアのメダイがはめ込まれた木製の「鬼子母神像」と付属の「切支丹厨子」はとても興味深い資料である。その他、函館市立中央図書館が所蔵する函館天主公教会(函館元町カトリック教会の前身)の古写真についても紹介したい。

郭南燕(東京大学)「新村出記念財団「重山文庫」の調査報告」

本発表は、2021年12月24日に、新村出記念財団「重山文庫」(京都市北区)で行った調査結果を報告するもの。重山文庫は、言語学、南蛮学の研究者である新村出の収集した書物を収めた機関である。

今回の調査は、他機関に収蔵されず、本機関にしか収蔵されていない土山湾関係らしいものを確認するためである。主に下記の資料(重山文庫目録)である。

1) 軽世金書 092〔トーマス・ケンピス著〕陽瑪諾(エマニュエル・ディアズ)訳
 1848刊 4巻1冊 和 26×15.5cm. 唐本(上海刊か)

2) 軽世金書便覧 092 〔Thomas Kempis 原著〕陽馮諾(Emanuel Diaz)訳述(1640) 呂若翰註釈   
 (1848) 粤東順徳 天主堂刊 1905 166p. 22cm.

3) 天主聖像略記他 092  写本1冊 26.2×18cm. 6丁目裏に「万延紀元庚申暑月…杞憂道人識」とあり 表紙に「禁書」と朱書す

3) 遵主聖範 092   刊行地・刊行年不明 4巻4冊 和 20.2×12.5cm. 天主堂蔵本

4) 不得已弁 092   利類思著 天主降生1847年重刊,1845年自序 50丁 和 26.1×15.3cm.

5) 吉利支丹関係写真 092
 どちりな 8葉 19×14.8cm. ぎやどぺかどる 6葉 〃 銅版画 2葉 〃

6) 吉利支丹関係写真 092 フランシスコ・サビエル像他6葉

7) 長崎切支丹名勝案内 092
 浦川和三郎編 長崎 大浦天主堂 昭和8(1933) 48p. 13×19cm.

8) キリシタン関係写真 092
 1葉 29×14cm. 原図は日本で製作か 天国と地獄の図なるが如し

 これらの書物の一部分を撮影し、版元などを確認し、「重山文庫」の目録のミスを訂正することに貢献することができるだろうと思う。

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